何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。



「おはよー! ねー、今日帰りに駅前のクレープ食べに行かない?」

「お! いいねー! 行く行く! ……あ。生物のレポートやった?」

「げ、やっば忘れてた……。今からやって間に合うかなあ」

「生物は5時間目だし、いけるんじゃない?」


教室に入ると、みんな仲のいい友達同士で、楽しそうに会話をしていた。

私はそのどの輪にも加わらず、誰とも挨拶をせず、真っ直ぐに自分の席へと着いた。


ぼっちの私の朝なんて、毎日こんなものだ。

席に着いたと同時に、チャイムが鳴った。朝のホームルームの開始の合図だ。みんな慌ただしそうに自分の席に着く。


「おはよー、折原さん」


すると、私の隣の男子が、席に座りながら気安そうに挨拶をしてきた。

中井悠。率直に言うとリア充で、明るいその性格から、クラスの中心的な存在。授業中も、たまに冗談を言ってはクラスを湧かせている。

そして、やたらと整った女性みたいに綺麗な顔に、高校生男子にしては大きめの170後半と思われる身長。

短い黒髪は無造作に散らしてあり、耳元にはシルバーのフープピアスが時折光る。中性的な彼にはとても似合っていて、センスだってよさそうだ。
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