何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。




図書館の窓からは、夏色の澄んだ空と陰影のくっきりとした入道雲が見えた。

地面に容赦なく注がれる日差しは、遠目では少し揺らめいていて、今日も酷暑であることを物語っている。

しかし、密室で空調の効いた図書館内は、快適そのもの。図書館に入ってすでに数十分が経過したけれど、慣れてくると逆に肌寒さすら感じる。

そんな空間の中で私たち女子高生の3人が励むのは、大量の夏休みの宿題ーーの予定だったのだけれど。


「はー、やっぱり図書館は涼しいねえ〜」


詩織は机の上に頬をつけて、のんびりとした口調で言った。


「運動部の人は、暑い中練習してるんだよね……。私にはそんな苦行無理ですわー。マジ尊敬しかないです」


加奈ちゃんはそう言いながらノートに一生懸命何かを書いてる。宿題が進んでいるのかと思いきや、ちらりと見えたのはやたらと上手く描かれている、人気漫画の主人公。


「私も暑いの苦手……。日焼けすると、真っ赤になってヒリヒリするから嫌なんだー」


かくいう私も、数学の問題を数問解いた後は、どうも頭が回らない。2人と他愛のない話をしながらペンを手で弄んでいた。

ーー昨日、中井くんに偉そうな事を言ったけれど。私も夏休み後半に宿題に追われちゃうかもなあ。
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