何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。
「それにしてもさー、2人お似合いだよね。美男美女カップルって感じで」

「あ、それ思ったー」

「へっ……? 美男美女……?」


中井くんは美男には間違いないけれど。美女とは一体誰のことを言っているのだろう。

話の展開からすると私しかいないのだが、私は確かみんなに恐れられるほどの恐ろしい外見のはず。


「え、だって桜美女だよー!」

「色白だし、顔立ちもはっきりしてるしね。背もあって、モデルみたい!」

「え、でも少し前まで、私の見た目みんなに怖がられてたのに……」

「いやいや! 確かに桜は目力ハンパないから、喋らないと少し怖く見えるみたいだけどさー!」

「クラスのみんなとも喋るようになってきてから、男子達が桜っちのことかわいいとか美しいとかって、よく言ってるんだよー」

「えぇぇ!? そうなの!?」


信じられなくて、今度は私が大きい声を上げてしまう。カウンターに戻った司書さんが睨みつけているのが見えた。私は申し訳なさそうに頭を下げる。

そういえば、中学生のときは「桜ちゃんは美人だからねー」とか友達に言われたりしたし、お母さんも「桜はかわいいよ」とよく言ってくれたりしているけど。

今までそう言ってくれたのは、親しい間柄の人だけだったから。私は話半分にしか聞いていなかったのだった。
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