純真~こじらせ初恋の攻略法~
発せられた言葉の意味が全く理解できない。

この人はいったい何を言っているのだろう。

「おっしゃっている意味がわからないんですが……」

絞り出すようにそう言った私に対して、湯川さんは悪びれもなく向き直った。

「ホテルに連絡した時、もうあまり部屋が残ってないって聞いてさ。俺たちみたいに慌てて部屋を探してる人も他にいるだろうし、だったらツインでと思ったんだよね」

見ず知らずの他人に気を遣うくらいだったら、どうしてもっと私に気を遣ってくれなかったんだ。

私達は異性で他人で親しくもない、ただの同僚だというのに。

「俺も抵抗はあったんだけどさ。同室って言ってもベッドは別だし、大きな問題ではないかなと思って」

「これを大きな問題じゃないと思うなら、湯川さんの思考は本当におかしいと思います」

男と女がいくらベッドが別だとしても同じ部屋に泊まるだなんて。

普通の人では決して考えもしないことだろう。

なのにこの男はさらりとやってのけるだなんて。

本当に信じられない。

「下心なんてないんだよ?橘さんは大事な会社の同僚だし」

「それがわかってて、どうしてこんなことになるんですか。有り得ないですっ」

「それは……まぁ……」

ここにきてようやく湯川さんの言葉が濁る。

「人としておかしくないですか?」

畳みかけるようにそう言うと、湯川さんの顔から笑顔が消えた。

「そこまで言うんだ?橘さんって本当に俺のこと嫌いだよね」

一歩踏み出され、私は咄嗟に一歩後ずさる。

湯川さんも男だというのに、強く出過ぎてしまったかもしれない。

私は急に恐怖を感じた。
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