純真~こじらせ初恋の攻略法~
大好きな人の特別な存在という意味を持つ『彼女』に私が本当になれるなんて。

「私が藤瀬くんの『彼女』で、藤瀬くんは私の……」

「俺は橘の『彼氏』だな」

なにこれ。

もうありえないくらい嬉しいんだけど。

「宜しくお願いします。彼氏さん」

照れ隠しのようにおどけてみせると。

「こちらこそ宜しくお願いします。彼女さん」

藤瀬くんもまた、私に同調してはにかんだ笑いを見せてくれた。

それから私達は離れた雑居ビルの階段を上り、手を繋いだまま花火が終わるまで踊り場で花火を見続けた。

友達としてここに来たのに、カレカノとして一緒に花火を見ているなんて。

今日一日の出来事は、眠ってしまえば消えてしまうんじゃないかと不安になるほど幸せだった。

家まで送ってもらっている道中も、『この人は私の彼氏です』とみんなに自慢したくなるほどだ。

家への距離が近くなればなるほど、私達の歩幅は少しずつ小さくなっていった。

「着いちゃったな」

私の家があるマンションの前に立ち、藤瀬くんは繋いでいた私の手をじっと見つめた。

「もっと歩いてたかった気がするな」

どこまでも同じ気持ちの私達は、このまま別れるのが寂しくて仕方がない。

「私も。でもこれからはずっと一緒にいられるよね?」

「ああ。もちろん」

「また明日な」

「うん。送ってくれてありがとう。また明日ね」

確実な約束があるというのは、本当に安心する。

これからの私達の未来は明るいものになると、この時の私達は信じて疑わなかった。
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