純真~こじらせ初恋の攻略法~
引き返せない想いを自覚したまま、藤瀬くんの胸の中にいるこの状況。

これでは『無関係』以上のことを望みたくなってしまう。

このまま涙に濡れた瞳で藤瀬くんを熱くみつ見つめれば。

不安気に少しだけ窄めた唇を軽く開けば。

彼は私に口付けてくれるだろうか。

そんな打算的な考えがチラついてしまうのは、私がそれほどまでに藤瀬くんを求めてしまっているからなのかもしれない。

独りよがりな私の思いも、傷付いた今の私の状況ならば、たとえこの場限りであったとしても、藤瀬くんなら受け入れてくれるかもしれない、という淡い期待が鼓動を乱す。

昔のような純粋さをすっかりなくしてしまった今の私は、さっきからそんな恥ずかしいことばかり考えてしまうのだ。

そしてあわよくば、私と同じ思いを藤瀬くんにも抱いてもらいたい。

自分にとって都合のいいことばかり望んでしまうのだから救えない。

もっと現実を見なければ駄目だ。

そうでなければ、あの時みたいにまた深く傷付いてしまうことにもなりかねないのだから。

私はもう、藤瀬くんに傷付けられたくない。

あんな思いは二度としたくないんだから。
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