純真~こじらせ初恋の攻略法~
合わさった二人の熱から伝わるのは、男と女としての欲のみだ。

遠い昔に重ねた唇は、ぎこちなくて照れくさくて、なんだかとっても甘酸っぱいものだったのに。

色濃く漂う妖しい空気にのまれてしまっている私達は、完全に我剥き出しの男女になっていた。

もう計算だとか過去だとか、そんなことはなにも考えられないくらい。

今の藤瀬くんで私の心はいっぱいになっていた。

重なり合っていただけの唇から力が抜け始めると、どちらからともなく探り合うかのように舌が動き始める。

一度絡まれば夢中で求め合うものだ。

とても仕事に行く前の短い時間で交わすキスとは思えないほど、それは深く艶めかしくなっていく。

時折漏れ出す甘い吐息は、欲情を色濃く表しているようで生々しい。

けれど不思議と少しも恥ずかしさなんて感じない。

私達は今、もうお互いしか感じられなくなっているのだろう。

あの頃とは違う淫らなキス。

角度を変えて貪るように唇を求め合い、かき抱くように抱きしめ合った。

この時間がずっと続けばいいのにと思うけれど、そうもいかないことはお互いにわかっている。

絡まっていた舌がするりと解け、私達は吐息と共に唇を離した。
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