純真~こじらせ初恋の攻略法~
そっと目を伏せて溜め息を漏らした藤瀬くんは、額に手をやり頭を抱えた。

「そんなことわかってたはずなのに、どうして俺はまた……」

かなり思い詰めている感じに見受けられるのはどうしてだろうか。

けれど『また』というなら、それは私のセリフだ。

一度あんな別れ方をしたくせに、性懲りもなくまた藤瀬くんに惹かれて、こんなにモヤモヤしている。

これが『また』と言わずして何というのか。

「そうですよね。所詮人なんてそんなものなのかもしれません。陰で何してるかなんて、秘密にしてればわかりませんしね」

どんなに私が藤瀬くんのことを好きでも、平気で秘密を持たれて裏切られていた。

あの時の消失感は今でも忘れない。

忘れられるわけないんだ。

もはや何に対して腹を立てているのか分からなくなってしまった私に。

「信じてた人が、笑顔の裏側で自分を裏切ってことを知った時の気持ち、知ってて言ってんの?」

藤瀬くんはいきなり攻撃的な目を私に向けてきた。

これはまるで、この会社で再会した時の彼の冷たい瞳と同じだ。

「知ってるよ」

それを教えてくれたのは、他の誰でもない、藤瀬くんじゃないか。
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