純真~こじらせ初恋の攻略法~
いったいなんだというのだろう。

笑顔どころか目も合わせてくれなくて、全く会話ができないではないか。

「ねえ……」

「なに?」

「やっぱ、何かあったよね?」

「いや、別にないから」

覗き込んだ私と藤瀬くんの間に、ザっと大きな線が引かれたような気がする。

何か言わなければと焦ったけれど、このまま弾みもしない会話を探していたところできりがない。

こうなれば早く移動してしまうに限るというものだ。

「けっこう時間ギリギリになっちゃうね。みんな集まってるかも」

「俺が遅かったからな」

「……」

誰もそんなこと一言も言ってないじゃないか。

返答に困るようなことを自虐のように言うのは止めてほしい。

「本当はもう少し前に来てたんだけど」

「え?」

「茉莉香が男と楽し気に話してたし。あれ……永久だろ?」

いくら親友だったと言っても、十年以上も会っていなければ自信がないのだろう。

藤瀬くんは眉を寄せながら私に聞いてきた。

「そうだよ。気付いてたなら来てくれればよかったのに。田原くんも早く藤瀬くんに会いたがってたんだから」

明るくそう言った途端、藤瀬くんの顔があからさまに歪んだ。

私の何気ない一言は、どうやら藤瀬くんにとってお気に召す言葉ではなかったらしい。

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