純真~こじらせ初恋の攻略法~
土曜日ということもあって込み合っている店内だったが、スムーズに個室の前に案内してもらえた。
この中には20名ほどの元クラスメイトがいる。
今日ここに『彼女』が参加しているかどうかは聞いていないけれど。
もし参加しているならば、一体どんな顔をしてその場にいるのだろうか。
そして私は『彼女』を目の前にしたとき、一体どんな顔をするのだろう。
不安で足が動かなくなってしまった時、藤瀬くんがそっと私の肩を抱いてくれた。
「大丈夫だよ。俺達はもう何があっても惑わされない」
低く優しく諭すように。
藤瀬くんの言葉を聞くと、全身の力が抜けそうになる。
そっと視線を合わせると、藤瀬くんは優しく微笑んでくれた。
それだけでゆうき思が持てた私は、思い切って個室の引き戸を開けた。
騒がしい室内は既にお酒の匂いがする。
「茉莉香っ」
亜弓がいち早く私に気が付いて手を上げると、皆の視線が一斉に私と藤瀬くんに集まった。
しん……と一瞬で静まり返った室内に緊張が走ったが。
「真斗っ!てめえこの野郎!おっせえんだよっ!」
田原くんの一言で一気に歓迎ムードへと空気が変わった。
「お前、今までどうしてたんだよ」
「連絡くらいしろよな」
「ほら、いいからこっち座れよ」
クラスメイト達が藤瀬くんと肩を組みながら、強引に輪の中に引きずり込んでいく。
藤瀬くんは焦ったようにチラリと私を見たけれど、私はニコリと笑って頷いた。
藤瀬くんは皆の中心にいるのが一番似合っている。
一瞬で藤瀬くんを受け入れてくれた空気に感謝をしながら、私は手招きしてくれている亜弓と奈緒の間に腰を下ろした。