純真~こじらせ初恋の攻略法~
私と藤瀬くんが騙されたのは、かれこれ十年以上も前のことだ。

いくら由加里といえど、いつまでも子供のままでいるなんてことはない。

過去のことではあるが、罪悪感と後悔で私達の顔を見られないということであるならば。

私も少しは心落ち着くというものだが。

「なんか前日に産気付いちゃったらしくてさぁ」

「産気っ?」

産気付くって、それは出産間近ということで。

赤ちゃんが産まれるってこと……よね?

なに?

「由加里ってば、ホント勝ち組だよねぇ。大手総合商社のちょ~エリートとデキ婚なんてさぁ」

私は過去に囚われ過ぎて上手く恋愛もできなかったっていうのに、勝ち組エリートとあっさり結婚?

「昔から自分と釣り合う男は中途半端じゃ駄目だって言ってたもんね」

確かに藤瀬くんも同級生の中では一番優しくてイケメンで人気があった。

「今回のデキ婚も計画的だったって話だけど本当かな?」

私と藤瀬くんのことが全て由加里が考えたことだとすれば、昔からかなりの策略家だといえるだろう。

「うっそ!やっぱり?」

「どんな手使っても有言実行するんだから、怖いくらいブレないよね」

由加里は今も昔も由加里のままで、何も変わっていないということか。

周りの同級生たちは笑いながら由加里の話で大盛り上がりだ。

しかし私の心情は……。

「茉莉香………。怒りを通り越して呆れた顔してるよ」

亜弓にそう言われて私は慌てて頬を引き締めるけれど、果たしてうまくいっているのだろうか。



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