純真~こじらせ初恋の攻略法~
勢いがなければ、きっと何も話せないだろう。
自分の弱さを知っているからこそ、私は敢えて全力疾走で桜の木を目指した。
グラウンドに出ると、すぐに桜を見上げている藤瀬くんを見付けた。
藤瀬くんの周りが奇麗なピンクに染まっていて、温かい空気が彼を包んでいるように見えた。
彼は今、何を思って桜を見つめているんだろうか。
少しは私のことも考えてくれているのかな。
私のことを少しでも……好きでいてくれてるのかな……。
そんなことを考えてしまうと足が止まってしまいそうになる。
全てを我慢して、藤瀬くんの言うがままになってしまいそうだ。
そんなことは絶対に嫌だ。
今でも大好きな藤瀬くんの前で、自分を押し殺して何もなかったかのように笑顔を見せるなんて。
同じ最後でも、格好つけるのと騙されるのでは全く違う。
私は私らしく、納得した上で傷付きたい。
だからいまこうやって走ってるのだから。
さっきまで小さかった藤瀬くんの姿がどんどん大きくなって。
私は息を切らしたまま、彼の目の前に立った。