純真~こじらせ初恋の攻略法~
「茉莉香……」

いつも爽やかな笑顔なのに、眉に深いしわを寄せた藤瀬くんが、戸惑いがちに私の名前を呼ぶ。

藤瀬くんの声を聞いたのはいつぶりだろう。

今でも藤瀬くんの声を聞くと、胸がきゅんとしてしまうなんて。

私はいったい、どんだけ藤瀬くんのことが好きなんだろう。

「ごめ……」

「ごめんね、呼び出して」

藤瀬くんが謝りかけそうになったので、私は慌てて言葉を遮るように先に謝った。

先に藤瀬くんに謝罪なんてされたくなかったから。

藤瀬くんは何か言いたげに口を開きかけたけれど、私は有無を言わさず言葉を続けた。

「藤瀬くんにどうしても話したいことがあって来てもらったの」

「俺も茉莉香にずっと話したいことがあったよ」

嘘ばっかり。

本当に大切なことは後回しで隠そうとするから、こんなことになったんじゃない。

責め立ててしまいた気持ちもあったけれど、今は冷静に自分が下した決断を受け止めてもらうのが先決だ。

「何度も電話してくれてたのに取れなくてごめんね。私も藤瀬くんと話したかったんだけど、お互いのタイミングが合わなかったみたいだね」

確かに藤瀬くんの電話を何度も無視したけれど、藤瀬くんだって私の電話を無視したじゃない。

「でもそのおかげで、いろんなことを考えられたよ」

たくさん傷付いて泣いて怒って、やっと覚悟が決まったの。

「私達……ここでサヨナラしよう」

藤瀬くんを疑いの目でしか見られなくなる前に、いまここで別れたい。

これが私の結論だった。
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