純真~こじらせ初恋の攻略法~
「俺は茉莉香のこと、本当に好きだから……別れたくないよ……」

「嘘ばっかり」

苦笑してそう言うと、藤瀬くんはムッとしたような表情になった。

「嘘じゃないよ」

今さらそんなことを言われても、もう私の心には何も響かない。

もう全てが遅すぎたんだ。

私が藤瀬くんを好きな気持ちは変わらないけれど、信じる気持ちだけが抜け落ちてしまっている。

好きという気持ちだけじゃ遠距離なんて無理。

信じあえなきゃ……無理。

「じゃあ……」

このまま何も言わずに去りたかったけれど、どうしても一つだけ聞いておきたいことがある。

「どうして藤瀬くんは私に何も言ってくれなかったの?」

言いづらいことだったのかもしれないけれど、話そうと思えばタイミングはいくらでもあったはずだ。

大切なことだからこそ、人伝になんて知りたくなかった。

だからちゃんと納得できる答えが欲しい。

藤瀬くんはちゃんと聞かせてくれるだろうか。

すると藤瀬くんは深い溜め息をついて私を見つめた。

「茉莉香が好きだからこそ、離れてしまうことをどうしても言い出せなかった。俺自身が一番、茉莉香と離れたくなかったから……」

「藤瀬くん……」

藤瀬くん、ごめんなさい。

本当ならば嬉しくて涙が出そうな言葉だけれど。

私にはもう、それが本当のことには聞こえないよ。

「今まで本当にありがとう。さようなら……」

「茉莉香っ……」

藤瀬くんはまだ私に言葉を掛けてくれそうだったけれど、私は言葉も聞かずに藤瀬くんに背を向けた。

そうでもしないと泣き顔になってしまいそうだったから。
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