純真~こじらせ初恋の攻略法~
初出勤の月曜日の朝は、念入りに身支度を整えるために、いつもよりも一時間早く起床した。
とは言うものの、いつも以上に気合の入ったメイクをしたところで、そのうちナチュラルに戻してしまうのならば意味はないし。
肩甲骨まで伸びたブラウンの髪を巻こうにも、仕事をするときはひっつめてしまう。
服だって大して拘っているわけでもないので、始めだけ気合を入れても仕方がない。
ひとつひとつを考えていくと、結果として身だしなみチェックくらいしかすることはなかった。
前日に買っておいたクロワッサンにウインナーとコーヒーという朝食を済ませ、少し早めに家を出てコンビニに寄り、口直しにタブレットを買った。
さて、準備は完璧に整った。
この転職が私にとって好機になる。
そんな気がして私は足取り軽く職場へと急いだ。
最寄りの駅は前職と同じだというのに、反対路線はとても新鮮で心が浮き立つ。
三駅はあっという間で、下車して歩くとほどなくして見えてきたのは、私が一瞬惹かれた外観だ。
ここで働けることの歓びを噛み締めながら、始業15分前にオフィスのドアを開いた。
「おはようございます」
明るく挨拶をすると、5,6人の社員が一斉にこちらに目を向けた。
「本日からお世話になります、橘と申します。宜しくお願いします」
はきはきと自己紹介をし頭を下げると、口々に「宜しくお願いします」と明るい返事が返ってくる。
それだけでも嬉しくて、自然に笑顔が零れた。