純真~こじらせ初恋の攻略法~
その後に出勤してきたのは赤澤みちる(アカザワミチル)さんだ。

私よりも二つ年下で、CADオペレーターをしているらしい。

事務処理や設計補佐なども担当している彼女は、カールのかかった綺麗な茶色の髪と、可愛らしい顔なのに気の強そうな目が印象的な女性だ。

美海さんのように人懐っこいわけではないけれど、だからといって意地が悪そうでもない。

クールという言葉が一番しっくりくる。

「よろしくお願いします」

と頭を下げれば、「こちらこそ」とだけ返してくれた。

「つんけんしてるけど、根本的には悪い子じゃないから。気にしないでね」

美海さんがそうフォローしてくれた。

人の性根は顔を見ればなんとなくわかる。

赤澤さんを見る限り、何の支障もないように見えた。

「大丈夫です。ハッキリされていて、逆に接しやすいです」

「だったらいいけど」

美海さんは心配そうな顔をしたけれど、いままで人間の裏表の怖さを目の当たりにしてきた私だ。

どんな感情であっても表に出してくれるということ自体が有難い。

それよりも問題なのは……。

「橘さん、わからないことがあったら何でも俺に聞いてくれていいから。仕事のことなら全部教えてあげられるよ。こう見えて頼りになる奴だからさ、俺は」

赤澤さんとの自己紹介中に出社してきた男性社員の湯川保(ユカワタモツ)さんも方が問題だ。

軽いというか軽薄そうというか。

一言で言うとチャラい。

そしてウザい……。

私がもっとも苦手とするタイプの男性といえるだろう。
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