純真~こじらせ初恋の攻略法~
湯川さんは鬱陶しいくらいに私に話しかけてくる。
その内容の大半は自己自慢で、どんな資格を持っているだの、どれくらい大きな仕事をしただの、どれだけ女性にモテるだの。
中身のない話ばかりだ。
美海さんと赤澤さんの表情を盗み見ると、こんな話が日常茶飯事なのだと推測できる。
どうやら私は湯川さんに、いいカモだと認識されてしまったらしい。
そろそろ愛想笑いも限界に達してきたところで、席を外していた井手口部長が戻ってきた。
「よーし、ミーティング始めるぞ」
その救いの言葉でようやく私は湯川さんから解放された。
デスク横の円卓にそれぞれが座り、改めての自己紹介から始まる。
「うちの部署にはあと二人いるんだが、今日はクライアントとの打ち合わせ後の出勤になってるんだ。小一時間で終わるらしいから、もうすぐ出社してくるはずだから、後で紹介するな」
井手口部長はそう言うと、本日の業務連絡を全員に共有し、ミーティングを終えた。
「橘。ちょっといいか?」
井手口部長から引き留められその場に残ると、ブルーの分厚いファイルを私に渡す。
「橘は二級エクステリアプランナーと二級建築施工管理技士の資格を持ってるんだったな」
「はい」
「橘には早くクライアントのために、第一線で活躍してほしいと思ってる」
「ありがとうございます」
今まで誰に対しどう望まれて仕事をしてきたのかもわからなかった私にとって、『クライアントのために』という言葉は胸が震えるものだった。
その内容の大半は自己自慢で、どんな資格を持っているだの、どれくらい大きな仕事をしただの、どれだけ女性にモテるだの。
中身のない話ばかりだ。
美海さんと赤澤さんの表情を盗み見ると、こんな話が日常茶飯事なのだと推測できる。
どうやら私は湯川さんに、いいカモだと認識されてしまったらしい。
そろそろ愛想笑いも限界に達してきたところで、席を外していた井手口部長が戻ってきた。
「よーし、ミーティング始めるぞ」
その救いの言葉でようやく私は湯川さんから解放された。
デスク横の円卓にそれぞれが座り、改めての自己紹介から始まる。
「うちの部署にはあと二人いるんだが、今日はクライアントとの打ち合わせ後の出勤になってるんだ。小一時間で終わるらしいから、もうすぐ出社してくるはずだから、後で紹介するな」
井手口部長はそう言うと、本日の業務連絡を全員に共有し、ミーティングを終えた。
「橘。ちょっといいか?」
井手口部長から引き留められその場に残ると、ブルーの分厚いファイルを私に渡す。
「橘は二級エクステリアプランナーと二級建築施工管理技士の資格を持ってるんだったな」
「はい」
「橘には早くクライアントのために、第一線で活躍してほしいと思ってる」
「ありがとうございます」
今まで誰に対しどう望まれて仕事をしてきたのかもわからなかった私にとって、『クライアントのために』という言葉は胸が震えるものだった。