純真～こじらせ初恋の攻略法～
「冗談じゃないの？」

「嘘でしょ……」

二人が信じられないのも無理はない。

藤瀬くんとの再会して約一週間。

毎日顔を見ているにもかかわらず、私自身いまだに信じられないのだから。

運命だなんて綺麗な言葉では言い表せない。

この再会は試練だとさえ思う。

だからこそ、その試練を乗り越えて前に進まなければならない。

「昔の話です。本当に。こうやって再会するまで思い出しもしなかったくらいの小さな思い出です」

慌てふためくのも力を込めて否定するのも違う気がして、私は流すようにそう言った。

必死の大人の対応が功を奏したのか、そこ件に関しての追求からは逃れることが出来た。

「ねぇ橘さん」

急に真鍋さんが真剣な顔をして呼ぶものだから、私は思わず息をのんだ。

「昔の藤瀬くんがどうだったかは知らないけど、今の藤瀬くんはなんと言うか……」

何か言いづらいことでもあるのだろうか。

真鍋さんはゆらゆらと目を泳がせた。

「社内でもそうだけど、取引先でも女性人気が高いの。相手に合わせて軽い感じで受け流すものだから、期待している女性も少なくないわ。だからもしかしたら橘さんにいろいろと言ってくる人もいるかもしれない」

「……」

「彼を軽い男だって言う人もいる。でも私は、藤瀬くんは本当はとても紳士的で真っ直ぐな人なのかもしれないと思うの。周りの声に耳を傾けず、彼の本質を見てあげてほしい。これが私の最後の引き継ぎよ」

「……はい」

真鍋さんの言葉の真意は読み取れなかったけれど、その言葉の通りに私は過去を振り返らず今の彼を見ていこうと心に決めた。
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