純真~こじらせ初恋の攻略法~
目の前の世界が回る……。

ああ、そうか。

地球って回ってるから……。

ははっ……私中心に世界が回るなんて、最高に気持ちがいいじゃないか。

ずっとこのままでいられればいいのに。

そんなことを思ってみたところで、時間が止まってくれるわけでもなく、とうとうお開きの時間になった。

事前に集めていた会費で幹事が会計を済ませているあいだに、社員達は順に店を出る。

私も店を出ようと、もたつきながらも必死に靴を履き歩き出したが、はたしてうまく歩けているのかも微妙だった。

真鍋さんや美海さんもすっかり出来上がってしまっていて、私の横でよろよろしながら陽気に笑っている。

私をガードしてくれていた二人が酔っているのをいいことに、すかさずやってきたのは湯川さんだった。

「橘さん、大丈夫?肩貸すよ。俺に捕まって?」

手を取られそうになったが、私はサッと手を引いて回避する。

「いえ、大丈夫です」

「大丈夫じゃないよ。フラフラしてるじゃない。遠慮しなくていいから、ほら」

そう言って湯川さんは私の腰に手を回してきた。

「いや、本当に……いいですから」

湯川さんの手を押し戻そうとするが、酔っ払いに力なんてあるわけがない。

ビクともしない手から逃れようと身を捩ったとき。

「危ないから」

低い声が聞こえたかと思うと、私は声の主にグイッと引っ張られしまった。
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