純真~こじらせ初恋の攻略法~
二人で向かった先は有名チェーン店のコーヒーショップだった。
レジで注文を済ませてカウンターで受け取ると、そのまま席に向かい向い合せで座る。
本当なら少し離れて座りたかったのだけど、藤瀬くんが二人掛けのテーブル席を選んでしまったのだから仕方がない。
なるべく目を合わせないようにして、カップのブラックコーヒーをすすった。
「コーヒー、飲めるようになったんだな」
藤瀬くんは私の口元を目を細めて見つめながらそんなことを言う。
「昔はさ、コーヒーなんて苦いものは飲めないって言って、いっつも甘いミルクティーだったよな」
そうだった。
デートの時も学校帰りの時も、藤瀬くんはいつも私にミルクティーを手渡してくれていた。
それがとても嬉しくて、コーヒーが飲めるようになったのも内緒にして、いつも藤瀬くんの優しさを受け取っていたんだ。
「そんなこと……よく覚えてますね」
「そりゃ覚えてるよ。あの頃のことは」
「……」
藤瀬くんにとって、あの頃のことは思い出したくもない思い出なんじゃないか。
勝手にそう思い込んでいた私は、その言葉に驚きを隠せなかった。
「あの頃の茉莉香は笑顔がとっても可愛かったな。そういえば俺、再会してから茉莉香に笑いかけてもらってない気がするんだよね」
「そうでしたっけ」
「今の茉莉香の笑顔、見せてよ。ついでに敬語もやめてくれると嬉しいんだけど」
「それは無理ですね」
私が即答すると、藤瀬くんは少し切なげに「そっか。無理言ってごめんね、橘さん」と笑った。
私が藤瀬くんに笑顔を見せていたのは、彼と私の気持ちは繋がってると思い込んでいたからだ。
純粋に、素直に、なんの疑いもなく。
藤瀬くんの気持ちを信じていたからなんだ。
だからこそ、今の私は藤瀬くんにあの頃と同じ笑顔を見せることなんてできない。
レジで注文を済ませてカウンターで受け取ると、そのまま席に向かい向い合せで座る。
本当なら少し離れて座りたかったのだけど、藤瀬くんが二人掛けのテーブル席を選んでしまったのだから仕方がない。
なるべく目を合わせないようにして、カップのブラックコーヒーをすすった。
「コーヒー、飲めるようになったんだな」
藤瀬くんは私の口元を目を細めて見つめながらそんなことを言う。
「昔はさ、コーヒーなんて苦いものは飲めないって言って、いっつも甘いミルクティーだったよな」
そうだった。
デートの時も学校帰りの時も、藤瀬くんはいつも私にミルクティーを手渡してくれていた。
それがとても嬉しくて、コーヒーが飲めるようになったのも内緒にして、いつも藤瀬くんの優しさを受け取っていたんだ。
「そんなこと……よく覚えてますね」
「そりゃ覚えてるよ。あの頃のことは」
「……」
藤瀬くんにとって、あの頃のことは思い出したくもない思い出なんじゃないか。
勝手にそう思い込んでいた私は、その言葉に驚きを隠せなかった。
「あの頃の茉莉香は笑顔がとっても可愛かったな。そういえば俺、再会してから茉莉香に笑いかけてもらってない気がするんだよね」
「そうでしたっけ」
「今の茉莉香の笑顔、見せてよ。ついでに敬語もやめてくれると嬉しいんだけど」
「それは無理ですね」
私が即答すると、藤瀬くんは少し切なげに「そっか。無理言ってごめんね、橘さん」と笑った。
私が藤瀬くんに笑顔を見せていたのは、彼と私の気持ちは繋がってると思い込んでいたからだ。
純粋に、素直に、なんの疑いもなく。
藤瀬くんの気持ちを信じていたからなんだ。
だからこそ、今の私は藤瀬くんにあの頃と同じ笑顔を見せることなんてできない。