純真~こじらせ初恋の攻略法~
そうはいっても仕事は仕事。

キッパリと割り切ると決めたからには、仕事モードに切り替えなくてはならない。

緊張を解すという名目で早く出たけれど、なんだか違う緊張が増したような気がする。

程なくして着いた谷脇邸は。

「ここかぁ……」

思わずポロリと言葉が出るほど有名な高級タワーマンションだった。

お値段は軽く億を越すと言われるマンションの最上階だと言うのだから、どれだけのボンボンなのか想像できる。

「こんな所に住めるほどのお給料もらってるにもかかわらず仕事できないなんて。評判悪くて当然ですね」

タワーマンションに住んでいる御曹司の尻拭いをしている人間が、普通のマンションやアパートに住んでるんじゃ、割が合わないというものだ。

「それなんだよなぁ」

藤瀬くんは苦笑しながら自動ドアを抜けてオートロックのインターホンを鳴らした。

応答があり名前を言えば、『上がってきてー』と軽い言葉と同時にエントランスの自動ドアが開く。

上層階専用のエレベーターに乗り込むと、最上階のボタンを押した。

かなりのスピードで上がっているのだろうが、私が今まで乗ったどのエレベーターよりも、到着まで一時間がかかった。

エレベーターを下りると、フロアには3つしか玄関がない。

どうやら最上階は三戸しかないらしい。

一体中はどれだけ広いんだろうか。

期待と不安が入り交じる私を横目に、藤瀬くんは二番目の玄関のインターホンを押した。
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