純真~こじらせ初恋の攻略法~
あれ……。

藤瀬くんって……こんな顔だったっけ?

そう感じてしまうほど、今私の目の前に立っている男の子はとても大人びて見えた。

いつも教室で見ている藤瀬くんとは、表情も態度も全く違う。

じっと見つめてしまえば、バクバクと心臓の音が口から漏れ出しそうだ。

ヤバい。

緊張しすぎだよ。

対面しただけで異常なくらいの緊張を覚えて。

よし、今日の告白は見送ろう。

そんなヘタレた決断を下したとき。

「俺……橘に言いたいことがあるんだ」

藤瀬くんは私にそう言った。

「言いたいこと?」

私もさっきまであったんだけど。

心の中でそんなことを思いながら、藤瀬くんの次の言葉を待った。

藤瀬くんが私に対して言いたいことがあるなんて、一体何のことだか全く想像もできない。

こんなふうに藤瀬くんと見つめ合ってしまったら、やっぱり気持ちが口から漏れ出してしまいそうだ。

「好きだ」

その言葉は、今まさに私が伝えそうになった言葉。

「え?」

私が無意識に口にしてしまったのだろうか。

それにしては藤瀬くんの声に聞こえたのだけれど……。

私の願望?

ぽかんと間抜けな顔で藤瀬くんを見つめていると、彼は「だから……」と困ったように溜め息をついて。

「俺は橘が好きだって言ったんだよ」

藤瀬くんは私が伝えたかった言葉を先に私に伝えてくれたのだ。
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