純真~こじらせ初恋の攻略法~
谷脇さんとの打ち合わせは、毎回そう内容の濃いものではない。

彼の話が6割。

3割私を口説いて、1割程度の仕事の話。

今回もそんなところかと思っていたが、今日の藤瀬くんは違った。

谷脇さんの話に上手く合わせながら、どんどん仕事の話をねじ込んでいく。

私は言葉を漏らさずタブレットに打ち込み、レイアウトの要になるよう纏めていった。

打ち合わせは今日中に終わらせる。

藤瀬くんの言ったことは現実になりそうだ。

「本日をもって打ち合わせは終了となります。お陰様で谷脇様の希望に添えるプランが出来上がりそうです。最終のレイアウトが完成したらメールに添付しますのでご確認ください。谷脇様の了承が取れ次第、インテリアの発注にかかります」

「えぇっ。もう終わったわけ?」

かなり不服そうに椅子にふんぞり返る谷脇さんに、「完璧に終了です」と藤瀬くんは顔に張り付いた笑顔を見せた。

「じゃ、橘さんに頼みがあるんだけど」

はっと閃いたように私にそう言った谷脇さんの顔を見るが、嫌な予感しかしないのは何故なのだろう。

「谷脇様の依頼は全て私が引き受けておりますので、橘にできることはないかと」

藤瀬くんが即座に返答すると、谷脇さんは露骨に眉を顰めて藤瀬くんを牽制した。

「別に仕事の話だとは言ってないだろ?個人的な事だよ」

「でしたら尚更橘にできることはないと思いますが」

「あーもう、うるさいなぁ。藤瀬くんはいちいち人のプライベートに口を出すわけ?俺に対してどの立場からそんなこと言ってんの?」

そう言われてしまえば、私も藤瀬くんも言葉に困り、黙り込んでしまった。
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