純真~こじらせ初恋の攻略法~
「やっぱり……」
思わずそう呟いてしまったのは、退社後、最寄りの駅前に止まっていた高級車の運転席で手を振る谷脇さんの顔を見たからだろう。
完全スルーで通り過ぎようと試みたのだが、私はあっさりと谷脇さんに捕まってしまった。
「そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいんじゃない?俺、上客なんだけど」
運転席から顔を出して自分を親指で指すあたり、上客とは言い難い仕草であるが。
しかし客だと言われてしまえば丸無視することもできやしない。
「一応確認なんですが、どうしてここに?」
どうか偶然であってくれ。
挨拶だけ交わして、さっさと帰ってくれ。
そんな私の心の底からの願いは。
「茉莉香ちゃんを待ってたに決まってるでしょ」
粉々に砕け散った。
しかも『ちゃん』呼びに変化しているし……。
「私、お断りしましたよね?」
「断られたって認識はないんだよね」
やはり遠回しの言葉では、察することのできない男だったか。
これだから自意識過剰のアホな男は嫌いなんだ。
「食事だけでも付き合ってよ。すっごい美味しいフレンチがあるんだ」
どんなに美味しいフレンチだろうがなんだろうが、一緒に食事をする相手が谷脇さんでは意味がない。
美味しい食事というものは、一緒に食べる相手との関係性がとても大切なのだ。
「申し訳ありませんが……」
「大事なクライアントの好意を無下にするってどうなの?もうデートなんて言ってないだろ?」
谷脇さんは車から降りると、反対に回って助手席のドアを開け、ぐっと言葉を詰まらせた私を招き入れようと手を取った。
「もう打ち合わせは終わったんだ。最後に一度だけ食事くらいいいんじゃない?」
ここまで言われてしまうと、頑なに拒めるほどの勇気を持ち合わせていない私は、「……分かりました」というしかなかった。
思わずそう呟いてしまったのは、退社後、最寄りの駅前に止まっていた高級車の運転席で手を振る谷脇さんの顔を見たからだろう。
完全スルーで通り過ぎようと試みたのだが、私はあっさりと谷脇さんに捕まってしまった。
「そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいんじゃない?俺、上客なんだけど」
運転席から顔を出して自分を親指で指すあたり、上客とは言い難い仕草であるが。
しかし客だと言われてしまえば丸無視することもできやしない。
「一応確認なんですが、どうしてここに?」
どうか偶然であってくれ。
挨拶だけ交わして、さっさと帰ってくれ。
そんな私の心の底からの願いは。
「茉莉香ちゃんを待ってたに決まってるでしょ」
粉々に砕け散った。
しかも『ちゃん』呼びに変化しているし……。
「私、お断りしましたよね?」
「断られたって認識はないんだよね」
やはり遠回しの言葉では、察することのできない男だったか。
これだから自意識過剰のアホな男は嫌いなんだ。
「食事だけでも付き合ってよ。すっごい美味しいフレンチがあるんだ」
どんなに美味しいフレンチだろうがなんだろうが、一緒に食事をする相手が谷脇さんでは意味がない。
美味しい食事というものは、一緒に食べる相手との関係性がとても大切なのだ。
「申し訳ありませんが……」
「大事なクライアントの好意を無下にするってどうなの?もうデートなんて言ってないだろ?」
谷脇さんは車から降りると、反対に回って助手席のドアを開け、ぐっと言葉を詰まらせた私を招き入れようと手を取った。
「もう打ち合わせは終わったんだ。最後に一度だけ食事くらいいいんじゃない?」
ここまで言われてしまうと、頑なに拒めるほどの勇気を持ち合わせていない私は、「……分かりました」というしかなかった。