純真~こじらせ初恋の攻略法~
どう例えたらいいのだろう。

自分が生まれて初めて本気で恋をした相手が、私と同じ感情を持ってくれていた。

私が伝えたかった言葉を、彼が先に伝えてくれた。

この感動をどう表現したらいいの?

言葉を失うとは、こんな時に使う言葉なんだろう。

藤瀬くんが伝えてくれた言葉と同じ思いなのだと伝えたいのに、全く言葉が出てこないのだから。

「橘……俺の言葉、聞こえた?」

「あ……聞こえて……る」

なんとか絞り出した言葉は、人込みの中に消え入りそうなくらい小さかった。

「突然ごめん。本当は場所とか時期とかいろいろ考えてたんだけど。驚かせたよな」

「うん……。驚いた」

いろんな意味で驚いたとしか言いようがない。

「気付かなかった?俺が橘を好きだったって」

「全然……」

自分の気持ちに精一杯で、藤瀬くんに女の子として見てもらうのに一生懸命で。

藤瀬くんが誰を思っているかなんてことを考える余裕がなかったというのが正直なところ。

ましてや藤瀬くんの好きな人が自分だったなんて、そんな発想は微塵もなかった。

「マジか。一年の秋くらいからずっと好きだったんだ。橘って結構鈍感なんだな」

クシャっと笑った藤瀬くんに、私の心臓は鷲掴みにされてしまう。

けれど……。

「鈍感なのは私じゃなくて藤瀬くんの方だよ」

私はようやく藤瀬くんに自分の気持ちを伝える覚悟をした。
< 9 / 199 >

この作品をシェア

pagetop