純真~こじらせ初恋の攻略法~
「アンタ……バカなわけ?」

ポツリとそう吐き捨てられて、私は瞬時に自分の無力さを痛感させられた。

「こういう事が起こりうるって分かってたから、今まで谷脇さんの誘いを断ってたんじゃないのかよ」

谷脇さんはきっと見境なく女性を誘っている人だ。

それが分かりきってきたから、藤瀬くんの言う通り頑なに拒否していたはずなのに。

「駅前に車で待たれてて……」

「それがなんの理由になるんだよ。無理やり車に乗せられたわけ?そんなわけないよな。それなら少なからず目撃者もいて通報のひとつでもあるはずだし」

予想もしてなかったところに待ち伏せみたいなことをされて怖かった。

さすがに女性を無理やり……なんてことは無いはずだし、ちゃんと食事だけだと約束もしたし。

そんな甘いことを考えていた。

「なんの脅迫もなく自分の意思で車に乗れば、それを起こりうる全てに同意したと思うバカな男もいるわけ」

「はい……」

何も言えない。

言い返すことなんてできない。

これは全て私の落ち度だ。

「男の車に乗るってのは、それくらい覚悟して乗れよ。アンタいったい何年女やってんの」

藤瀬くんの強い口調に戸惑いながらも、私はただ一言。

「すみませんでした」

それしか言えなかった。
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