純真~こじらせ初恋の攻略法~
私の思い出の藤瀬くんと、美海さんが見てきた藤瀬くん。

いったいどちらが本当の藤瀬くんなのだろうか。

そんなことを考えたところで、過去が変わるわけではないのに。

「藤瀬くんのことはさ、これから茉莉香ちゃん自身の目で見極めていけばいいと思うよ。仕事も恋愛も、自分でなんとかするしかないんだから」

落ち込んでいた私を浮上させてくれる優しい微笑み。

今では亜弓や奈緒ともしなくなってしまった藤瀬くんの話を、こうやって話しているなんて。

過去の自分と今の自分を辿っていくと、私の気持ちはいったいどこに向いているのか分からなくなる。

過去の私は間違いなく藤瀬くんのことが好きだった。

裏切られたことに深く傷付いても、それでも好きがほんの少しだけ勝っていたような気がする。

ではいまはどうなんだろう。

十年以上も経って偶然再会して他人行儀な態度にモヤモヤしたり、無関係という言葉に過敏に反応してしまったり。

藤瀬くんの仕事に対する姿勢や考え方、男らしい言動や逞しい腕に心を乱されて。

それでももっと藤瀬くんを知りたいと思ってしまっている。

この気持ちは一体何なのだろうか。

認めたくないのに。

大きく心を乱されていて。

このままでは何かが変わってしまいそうな。

再び湧き上がってしまいそうな。

そんなざわつきを感じた。
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