純真~こじらせ初恋の攻略法~
私は藤瀬くんのアシスタントだ。

もちろん仕事はそれだけではないが、基本的に藤瀬くん以外の人のアシにはつかない。

それに湯川さんには湯川さんのアシスタントがいるというのに。

「どうして私が湯川さんと一緒に出張なんですか?」

正直言って湯川さんと二人の出張なんて、御免こうむりたい。

だって……鬱陶しいんだもの。

「今回の仕事は他の課合同の仕事で、他課のアシがついてたんだがな。そのアシが急病になったんだよ。徳久はまだ手一杯だし、赤澤にはまだ荷が重い案件なんだ。一区切りついたみたいだし、橘しかいないんだよ」

「私……ですか」

「頼まれてくれないか?」

仕事だと言われてしまえば嫌だとは言えない。

全ての仕事には責任をもって仕上げなければならないからだ。

「いまから案件を把握できますかね?」

オーダーによってはとても複雑なものもある。

一日二日で叩き込めるものであるならばいいのだけれど。

「USBにデータを全部コピーしたから確認してくれ。大きな案件だが複雑ではないから問題ないだろう」

「わかりました。早速取り掛かります」

私は井手口部長からUSBを受け取ると、急いでデスクに戻ってデータを開いた。

内容はビルロビーの案件で、確かに難しいものではなかった。

けれど……私は無意識に大きな溜め息をついた。

「ま……橘さん」

PCの向こう側からの声に顔を上げると、難しそうな顔をした藤瀬くんが私に向かって手招きをしていた。
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