絶対領域
「別れの挨拶は済んだか?」
ガラの悪い連中が、冷やかすみたいに水をさしてきた。
私たちは顔を見合わせ、大きく頷く。
そして、せーちゃんとあず兄は、最後の最後まで私のことを気にしながら、ここから走り去っていった。
「あはは!本当に逃げやがった!」
「とんだ腰抜けだな!」
「女一人残すとか、最低すぎんだろ!」
ぎゃはははっ!!
耳障りな笑い声が、路地中に響き渡る。
ひとしきり大笑いすると、彼らの獲物は、ぽつんと取り残された私へと移り変わった。
「もうここには、お前を守ってくれる王子様たちはいねぇ」
「泣いても叫んでも、誰も助けてくれねぇよ?」
「俺らとイイコトしようぜ~」
「自分から言ったんだからな?何をされてもいい、って」
「何されても逃げんじゃねぇぞ」
……うるさいな。
無駄口叩きすぎ。