絶対領域
路地を抜け、繁華街の大通りに出た。
全力で動かし続けていた足を、一旦休める。
「……っ、追ってこねぇ、みてぇだな」
あずき兄さんが周囲を見渡し、追手がいないことを確認した。
ということは、あの薄汚ぇ奴らは皆、姉ちゃんを囲んで……。
「くそっ!!」
たまらず地面に吐き散らした。
ドク、ドク、と早く打つ脈が、俺を責めているようで、余計にむしゃくしゃした。
荒れた呼吸さえ、鬱陶しい。
「落ち着け、世奈」
「落ち着けるかよ!あずき兄さんは、悔しくねぇのかよ!」
あずき兄さんに怒鳴ったって、意味がない。
そんなこと、頭ではわかってるのに。
叫び足りなくて、苦しくて。
喉の奥を自ら絞め殺さないと、どうにかなってしまいそうなんだ。
「俺は、姉ちゃんに守ってもらいたいんじゃない!俺が、この手で、守りたいんだ!なのに……っ」
「落ち着けって言ってるんだ!!」
勢いよく両肩を鷲掴まれた。
あずき兄さんの骨ばった手のひらは、小刻みに震えていた。