絶対領域



さっきみたいに、姉ちゃんがああやって自分の身を犠牲にして。


それが俺とあずき兄さんのためだなんて。



悔しくならない、はずがない。



なんであんなことするんだよ。

黙って守られとけよ。



姉ちゃんのためなら、いくら傷ついてもいい。


神亀に入団すると決めた時、そう覚悟したんだ。




だって、きっと。

姉ちゃんは密かに、それ以上に深い傷を抱えているから。




「俺、は……っ!姉ちゃんに、傷ついてほしくねぇんだよ!!」



今でも、脳裏にこびりついて、離れない。




“あの時”の空白が終わりを迎えた、静かな夜。


扉を開けた先で、大粒の涙をこぼしていた、姉ちゃんの姿が。





あの日、俺は決めたんだ。


また姉ちゃんがいなくならないように、傷つかないように守ってみせる、と。




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