絶対領域
でも、うまくいかない。
今も、姉ちゃんを守るどころか、逆に守られて。
いつだって、俺の独りよがりだ。
『いっちょ前に威勢はいいな、クソガキが』
――うっさいな。
さっきのいけ好かない不良の声を思い出し、なおさら苛立ってきた。
ああ、そうだ。
そうだよ。
俺はまだガキだから、不良になってちょっとは強くなっても、姉ちゃんをまともに守れやしないんだ。
まだ15のガキ、だから。
姉ちゃんのそばにいるためには、卑怯な手を使わなくちゃいけなかった。
『俺を幹部にしろ。でないと、あずき兄さんが姉ちゃんを好きだって、バラしてやる』
2年前。
ちょうどあずき兄さんが総長に就任したばかりの頃、汚いやり方で神亀に入った。
あずき兄さんの恋情を利用して、最低だって、自分でもわかってる。
だけど、あずき兄さんを脅すしか、方法が見当たらなかった。
俺だけでは、姉ちゃんをそばで守り抜くことはできない。
認めたくないけど、事実だ。
だから、神亀を、姉ちゃんを守る“騎士団”にしたかった。
神亀の皆は最初こそ、新人がいきなり幹部になったことに、俺を受け入れてはくれなかった。
だが、俺の考えを教えると、協力的に動いてくれるようになった。
正直、姉ちゃんが男と仲良くなんのは嫌だったけど。
万さん、慎士兄さん、悠也、それからあずき兄さんが味方でいてくれて心強いのは、本当だ。