絶対領域
ひどい?ずるい?シスコン?
……なんとでも言えよ。
俺は、俺なりのやり方で自分の“強さ”を見つけて、姉ちゃんを守る。
それでも、まだ。
俺は弱くて、ちっぽけで。
姉ちゃんの時間は、“あの時”で止まったまま。
「……俺だって、同じだ」
ボソッ、と頭上にかすれた呟き声が降った。
「萌奈が傷つく姿なんか、見たくねぇよ」
あずき兄さんの瞼が、もどかし気に伏せられる。
空を埋める厚い雲と似た色をした瞳に、今日は隠れてる太陽を真似た色に染まる前髪が少しかかった。
「本当はあの場に残って、萌奈に近づく連中を片っ端からぶん殴ってやりてぇ」
グッと握られた拳は、行き場をなくし、空を切るだけ。