絶対領域
まがい物の泡沫
ぐるり、とネジを巻いて。
天使と悪魔の物語を綴っていく。
鈍い音色が奏でるは、ショパンの「別れの曲」。
心臓を引き裂くような痛みと共に、よみがえる。
“あの時”の最後を。
オリ――あなたとのさよならを。
『ごめん。もう、お別れだ』
ボロボロのセーラー服。
左半分だけ乱雑に切られた、天パの髪。
傷ついた、あなたの顔。
――今でも、このオルゴールを気に入ってはいない。
だって、思い出してしまうから。
嬉しかったことも、悲しかったことも、全部。
今の私の制服はブレザーだし、髪も胸元まで綺麗に伸びた。
それでも、過去の傷は、癒えないままだ。
オルゴールの歌を響かせ続けたまま、自分の部屋をあとにした。
パタン、と扉を閉める。
「姉ちゃん、行こ!」
「……うん、そうだね」
せーちゃんに手を引かれ、「行ってきます」と告げて家を出た。