絶対領域
でも、3人に何かされる前に気がついてよか……
――カシャンッ!
「きゃあっ!?」
よかった、と安堵しかけた刹那。
金切り声が上がった。
誰……!?
この場にいる全員が、声のした方向に視線を向けた。
あれ?
あっちって、スタンガンを飛ばした方向と同じじゃ……。
そこにいた人物に、栗色の目が丸くなっていく。
「……どう、して……」
「や、うら、さん……?」
いきなり足元に落ちてきたスタンガンに驚愕し、なおかつここで起こっている乱闘騒ぎに恐怖している、一人の女の子。
リボンタイが可愛い、西校の制服。
見覚えのありすぎる顔。
あの子は、私のクラスメイトで。
ついさっき、白鳥の衣装を任せてくれた、衣装係の子だ。
喉元を、締め付けられる。
どうして、今に限って、あの子はこんなところに来てしまったの?
あの子にとっては、いつもの帰り道だったはずなのに。
奇しくも、出くわしてしまった。
……あぁ、今になって、ようやく理解できた。
初めて新人いびりに巻き込まれた時、私の手を引いて一緒に逃げてくれた、みーくんの気持ちが。
ドクン。
蝕むような鼓動で、我に返った。
浅い息の中、手の震えもかまわず、叫ぶ。
「危ないっ!逃げて……!!」
いつも通りで終わるはずだった今日が、泡沫だったことなんか、初めから知っていたけれど。
まがい物だって何だって、素知らぬフリをして守っていたかったんだ。