絶対領域
最低だ。
こんな奴に、負けたくない。
……でも。
萌奈さんはやや俯いて、ためらった。
葛藤しているんだ。
萌奈さん、優しいから。
僕たちのことも、女子高生のことも。
どっちも無傷で守ろうとしてくれてる。
でも、いいんですよ。
悩まなくても、僕と翠くんと世奈くんの答えは、決まってる。
「わかった。その条件を呑む」
「え……?」
代わりに返答した世奈くんに、萌奈さんは弱々しく顔を上げた。
憂いているような、すがるような、不格好な顔だった。
「い、いいの?」
「そ、そんな顔、しないでください、萌奈さん」
「いいんだよ!これが最善の答えなんだから!」
「大丈夫。俺たちは負けねぇから」
萌奈さんは、誰かが傷を負うことに抵抗があるみたいだけど。
僕たちは、気にしてないんですよ。
だって、喧嘩というのは、誰かが傷ついて、傷つけられるもの。
痛いのは嫌だけど、傷がつく度に嫌がっていたらキリがない。
それに、何かを守れるなら、傷ついたってへっちゃらです。
どんなに傷ついたって、かすり傷。
それくらいで倒れるようなヤワじゃないですよ。