絶対領域
せーちゃんたちには、また心配をかけてしまうかもしれない。
それでも、行かなくちゃ。
自分から、自分の足で。
「手を貸そうか?」
ベッドから降りようとする私に、薄い赤茶色の髪の男の子が声をかける。
嬉しいけど、ここは断る。
「大丈夫。一人で、立てる」
深呼吸をしてから、右足、左足の順に床に足をついた。
スリッパを履いて、立ち上がる。
最初はふらついてしまったが、なんともない。平気だ、歩ける。
「……記憶を失っても、君は弱くて、強いね」
「え?」
「ううん、なんでもない。行こうか」
「うんっ!」
着慣れない病衣を身に纏い、2人で病室をあとにした。