絶対領域
「……ありがとう、皆」
ごめんね。
とも言われている気がした。
それが嫌で、萌奈さんを安心させようと、僕たちは微笑んだ。
「条件を呑んでやったんだから、さっさと解放しろよ」
「えらそうにしてんじゃねぇよ」
世奈くんの命令口調に舌打ちをしながらも、リーダーらしき男は味方に「放せ」と示す。
女子高生の肩に回されていた腕や、口を塞いでいた手が、離された。
「……っ、」
震えが止まらない女子高生は、脱力したように膝から崩れ落ちた。
ポロポロと、涙が流れていく。
恐怖心は消えてはくれず、逃げようにも足に力が入らないようだ。
「巻き込んで、ごめんね」
「……矢浦、さ……」
「怖かったよね」
まるで自分が全て悪いみたいに、萌奈さんは苦しそうにする。
萌奈さんは何も悪くないのに。
どうして。
「正義のヒーローにも、白馬の王子様にもなってあげられなくて、ごめんね」
「え?そ、それって……」
萌奈さん、何を言って……?
どういう意味なんだろう。
涙で濡れた瞳を見開く女子高生に、萌奈さんは優しく笑いかけた。
「また、明日ね」