絶対領域




「……ありがとう、皆」



ごめんね。

とも言われている気がした。


それが嫌で、萌奈さんを安心させようと、僕たちは微笑んだ。




「条件を呑んでやったんだから、さっさと解放しろよ」


「えらそうにしてんじゃねぇよ」



世奈くんの命令口調に舌打ちをしながらも、リーダーらしき男は味方に「放せ」と示す。


女子高生の肩に回されていた腕や、口を塞いでいた手が、離された。




「……っ、」

震えが止まらない女子高生は、脱力したように膝から崩れ落ちた。



ポロポロと、涙が流れていく。


恐怖心は消えてはくれず、逃げようにも足に力が入らないようだ。




「巻き込んで、ごめんね」


「……矢浦、さ……」


「怖かったよね」



まるで自分が全て悪いみたいに、萌奈さんは苦しそうにする。


萌奈さんは何も悪くないのに。

どうして。



「正義のヒーローにも、白馬の王子様にもなってあげられなくて、ごめんね」


「え?そ、それって……」



萌奈さん、何を言って……?

どういう意味なんだろう。



涙で濡れた瞳を見開く女子高生に、萌奈さんは優しく笑いかけた。




「また、明日ね」




< 240 / 627 >

この作品をシェア

pagetop