絶対領域
リーダーらしき男はイラつきだし、突然駆けだした。
僕たちのほうに近寄ってくる。
本能的に萌奈さんの盾となった世奈くんを狙い、首筋にスタンガンを当てた。
「ぅあ……っ!!」
ビリッ!!
首筋から刺激する電気。
その衝撃はたったの一瞬。
それでも。
「せーちゃん!!」
世奈くんを気絶させるには、十分すぎるほどだった。
倒れた世奈くんを、萌奈さんが支える。
「他人の心配してる場合かよ。お前らもこうなるんだぜ?」
リーダーらしき男を筆頭に、ガラの悪い連中は僕たちをバカにして、ニヤリと口角を上げる。
敵の人数は最初より格段に少なくなったのに、どうして勝ち誇ったような空気を醸し出せるのだろう。
気づいていないのだろうか。
敵の人たちは皆、悪者の顔をしていることに。
それがとても、醜いことに。
「次はお前だ、クソアマ」
萌奈さんに牙がむく。
スタンガンが迫っても、動じたり抵抗したりすることはなかった。
電流が流れる、直前。
「萌奈っ!」
「……み、みーくん?」
ドンッ!、と翠くんが萌奈さんの体を押した。
スタンガンは翠くんの首後ろに当たり、否応なしに衝撃が走る。
戸惑う萌奈さんの目の前で、翠くんは気を失った。