絶対領域
『もういい、大丈夫だよ』
だから、もう、守ろうとしないで。
ダイジョーブ。
自分で使うと、もっと陳腐で、薄っぺらかった。
そんな言葉だったからだろうか。
ユウには届かなくて、自分を犠牲にし続けた。
せめてユウに頼る癖を脱却して、ユウの負担にならないように頑張ろうと、ユウに内緒で思い切って不良になった。
不良は自分本位で強いイメージがあったから、こんな僕でも変われる気がして。
……でも、まだ、弱いままだ。
「悠也を怖がってねぇなら、なんでいつも会うと怯えてんだよ」
「そ、それは……」
不思議そうに首をひねる世奈くんに、思わず口ごもる。
不意に、雨音に混じって、軋む音が耳の奥を通り抜けた。
「ゆ、ユウに『迷惑ばっかりかけてごめん』って謝らなきゃなのに、ざ、罪悪感に苛まれて、昔の自分を思い出して……お、怯えてしまうんです」
「罪悪感?」
「ゆ、ユウが変わっちゃったのは、ぼ、僕のせいだから……っ」
ユウを傷だらけにしてしまったのは、僕だ。
そう悟ったら、余計に怖くて、苦しくて。
罪の意識に埋め尽くされた。
「び、びくびくしてたらユウに誤解されて、もっと迷惑かけちゃうってわかってるんですけど、ど、どうしても……」
自分の罪を、目の当たりにしているようで。
謝りたくても、言葉すら出てこなくなる。
本当は、今度は僕がユウを守れるくらい、強い男になりたいのに。
刹那。
――ガシャンッ!!
甲高い音が、激しく響いた。
「ユカのバカ!!」
……え?
「迷惑なんかじゃないよっ!!」