絶対領域
「僕が『大丈夫』だなんて無責任なこと言ったせいで、ユカは不登校になったんだもん。だから、償わなきゃって、僕が守らなきゃって……っ!」
「そ、そうやってユウは全部抱え込むから……それに甘えてばっかりだったから、ぼ、僕は自分が怖くなったんだ。こ、これ以上ユウを束縛したくなかった」
「甘えていればよかったんだよぉ!そんなことでユカを迷惑がったりしない!」
雨だ。
薄い黒の瞳からも、雨が降っている。
ポロリ、ポロリ。
透明な雫が滴る。
耳たぶを飾るピアスも、なめらかに揺れていた。
「僕はユカを守りたいから、守ってたの!それが僕の使命だったんだよぉ!勝手に迷惑だって決めつけないで!!」
「……ご、ごめんなさい……」
気迫に押し負けてまごつくゆかりんの肩に、ゆーちゃんの額が落ちてきた。
よく見ると、ゆーちゃんの髪も肩も足元も濡れている。
しん兄もだ。
一生懸命捜してくれたんだね。
また心配かけちゃったな。
「……でも、よかったぁ」
ゆかりんの学ランで涙を拭うように、額をこすりつける。
「ほんとは、ユカに嫌われたんじゃないかって、ちょっぴり不安だったんだぁ」
「ぼ、僕がユウを嫌うわけないよ!」
「……うん、そうだよねぇ。えへへ」