絶対領域



わかりやすく落ち込む私の肩を、薄い赤茶色の髪の男の子が優しく叩いた。



「俺に任せて」


「え?……あっ、ちょ……!」



小声でそう囁き、彼は一人で802号室へ堂々と歩いて行った。


任せてって、何をするつもりなの?



変装も何もしていないのだから、当然見張りの2人にすぐバレるわけで。


彼に気づいた途端、学ランを纏った2人は容赦なく高圧的な殺気を飛ばし始める。



「な、何の用ですか」

「リーダーに会いたいと言うのなら、リターンしてもらねばならないが」


気弱そうな男の子にも、長髪の男の子にも、彼は臆することなく苦笑していた。



「本当は何も言わないでって釘を刺されてたんだけど、記憶喪失とかいろいろ予想外のことが起こっちゃったし、仕方ない」



誰にも聞き取れない声量で、言い訳が漏らされる。


1秒にも満たない無音を、彼自身が裂いた。


覚悟を決めて、2人を見据える。



「情報を共有するために来た」


「……情報?」



ピク、と長髪の男の子の目尻が数ミリ反応した。



「お前たちが知りたがっている真実を、教える」


「それは、族の一員として、ですか?」



気弱そうな男の子の問いかけに、首を横に振る。


逸らされることのない茶色い眼差しは、どこまでも真っ直ぐだった。




「“   ”として、だ」





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