絶対領域
3人が廊下の奥の曲がり角を曲がったのを確認してから、802号室へ。
無人となった病室前。
森閑とした雰囲気に、生唾を飲み込む。
緊張する。
知らない人の病室に入るからだろうか。
それとも、一人だから?
でも、ここで引き戻るわけにもいかない!
ドキドキと強張った鼓動ごと受け止めるように、扉をゆっくりスライドさせた。
開いた窓の隙間から、冷たい風が侵入してくる。
物音ひとつしない静けさの中、小さな寝息だけがやけに大きく響いていた。
ここも個室で、ベッドがひとつしかない。
ベッドで眠っている黒髪の男の子以外、他に誰もいなかった。
引き寄せられるように近寄り、ベッドの横で足を止める。
「……よかった」
顔色がいい。傷も少し癒えてる。
無事で、よかった。