絶対領域
ためらいがちに、彼の頬に触れてみる。
ほのかな体温に胸の奥が高鳴る。
「あなたは、誰?」
……聞こえるわけ、ないか。
彼にとっての真実を、知りたかったけど。
これじゃあ答えられないよね。
無理に起こしたくないし。
薄い赤茶色の髪の男の子には申し訳ないけれど、黒髪の男の子が眠っていては何も聞けない。
帰ろうか迷っていたら。
「……ぅ、」
苦しそうな一音が、彼の唇からあふれた。
びっくりして、咄嗟に彼から手を離す。
だが、彼の腕がゆらりゆらりと弱々しく持ち上げられ、私の左手を力なく包んだ。
今度は、彼が、私に触れた。