絶対領域




「……も、な……?」



うっすら開かれた、彼の視界。

不明瞭に、それでいてしっかりと、私を映す。


確かめるみたいに、手を握る力がほんの少しだけ強まった。



「あぁ、やっぱり、萌奈【モナ】だ」



私の、名前。

なんて愛おしそうに呼ぶの。


ふにゃりと和らげた微笑みは、ちょっと歪で、可愛らしかった。



「……守れて……よか、た……」



ぎこちなく、紡がれる。

徐々にか細くかすれていって、最後のほうはうまく聞き取れなかった。



彼の視界が、また、閉ざされていく。



「待って、あなたは……っ!」

ねぇ、誰なの。




――『やっと、恩返しができた』



脳裏を、過る。


傷だらけになって私を守ってくれた、彼の姿が。




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