絶対領域
「そ、双雷と神亀をかく乱しろ、できるなら一人でも多くぶっ潰せって言われて、それで……っ」
ようやっと腑に落ちた。
紅組に依頼されたから、完膚なきまでやっつけた私を前にしても、堂々と挑んでこれたんだ。
監禁しておいて見張り役がいなかったのも、あず兄だけを集中的にいじめたのも、最初から理由などなかった。
私たちをかく乱させられたら、それでよかったんだ。
そして、その目的は達成された。
……悔しい。
知らぬ間に、紅組の思惑通りに踊らされていたなんて。
きっと、紅組にとって、私もガラの悪い連中もただの駒に過ぎない。
どれだけ抗ったって意味がないと、はるか上から冷笑されているようで、絶望感に打ちひしがれる。
『強くなりたい。どんなことがあっても、あなたを守れるように』
私はまた、守れないのかな……?
槍のように降り注ぐ雨が、なぜだかとても心地いい。
いっそ、この心臓ごとえぐってくれたなら。
この悪夢を嗤えるのだろうか。
「ふーん?紅組、ねぇ」
私以外にも。
真実を聞いていた者が、密やかに双眼をぎらつかせていた。