絶対領域
どうしよう。
今、オリのほうを見れない。
今回の騒動に紅組が関わっていると知ったら、オリはどうするんだろう。
『ごめん。もう、お別れだ』
“あの時”みたいに、離れていくのかな。
せっかくまた会えたのに。
嫌、だなぁ。
どこからか、オルゴールの音色が聴こえた気がした。
ふと前方から、誰かがタタタッと軽快に駆け寄ってきた。
絶望感が消えなくて、胸倉を掴んだままの両手が緩んでいく。
「ていやっ!」
目の前まで機敏にやってきたみーくんが、リーダーらしき男の頭に手刀を入れた。
頭のど真ん中にクリティカルヒットして失神したリーダーらしき男から、するり、と手が滑り落ちる。
背中から倒れた敵をスルーして、みーくんは心配そうに私を見つめた。
「萌奈?どうした?こいつに何かされた?」
なんでもない。大丈夫だよ。
そう伝えたくても、声は喉を通らなくて。
首を振るしか、できなかった。
どうしてこんなに泣きたくなってるんだろう。
苦しくて、たまらない。
「萌奈……」
やだ、やめて。
みーくんまで、憂いでいっぱいの表情をしないで。
そうさせているのは、私?