絶対領域
何も知らない子どものフリをして、未だに解けない枷鎖【カサ】を隠していたい。
けれど、どうやったって、うまく笑って騙せない。
自分自身すら、欺けない。
おもむろに伸びていく、みーくんの手。
そっと宝物に触れるように、私の頬を包んだ。
「……みーく、」
みーくんは温かくほころびて、背伸びをした。
チュッ。
短いリップ音が、溶けていく。
「……へ?」
今、みーくん、何した?
なんか柔らかい感触が、おでこに残って……。
先ほどとはまた違う熱が、お腹の底から這いあがってくる。
「み、み、みーくん!?」
「あ、よかった!」
取り乱して声を裏返らせる私に、みーくんは嬉しそうに目を細めた。
よかったって何が!?
「いつもの萌奈だ!」
「え?」
「ぐちゃぐちゃになってた気持ち、忘れられたみたいだな!」
あ、そういえば、さっきより苦しくなくなったかも……。
もしかして、今のはみーくんなりの慰め方?
だからって普通、年頃の女の子にチューする?
でも、そんなところも、みーくんらしい。
「ありがと。みーくんのおかげで、ちょっと元気になれた」
おでこにチューは、やっぱり照れちゃうけど。
額を気にしながらはにかむと、みーくんは「へへっ」と無邪気に微笑んだ。
こんな風にずっと、ふたりで笑い合えたら、私はそれでいいんだよ。
――ねぇ、オリ。