絶対領域
秘めやかな微熱
翌日。
本日は土曜日。
昨夜のどしゃ降りの雨とは打って変わって、今日は雲一つない快晴だ。
絶好の文化祭日和。
……なのだけれども。
「やばい、ものすっごくやばい」
はいどうもこんにちは、1個留年しちゃった高校1年生、矢浦萌奈です。
昨日はガラの悪い連中と、現在は現実と戦ってます。
「これが、白鳥?いやいや無理あるって、せいぜい白に塗りたくったアヒルだって」
誰もいない女子更衣室で、「白鳥の湖」の白鳥の衣装を身に纏った自分を下から上までじっくり観察する。
やっぱり白鳥になりきれない!
せっかく可愛い衣装が台無しだよ!
この衣装を作ってくれた衣装係の子を始めとしたクラスメイトの役に立ちたいし、昨日頑張るって決めたけど。
……けど!
もうこれは、いろいろとやばい気がする。
人前に出ていいのか不安になるレベルで。
少しでも可愛くなろうと、私なりに努力はした。
元々天パの髪をアレンジして、耳上に羽モチーフのバレッタもあしらったり。
慣れてないメイクを頑張ったり。
だけど、どう足掻こうが、衣装の可愛さにつり合わない。
「どうしよう……!!」