絶対領域
ベッドの上の彼は、再び夢の世界。
気持ちよさそうに、けれど切なそうに、寝息を立てている。
私の左手と繋がったまま。
『ここで争いが起こったのも、倒れてる奴も、血を流してる奴も、全部全部お前のせいだ!』
ズキン、ズキン。
消え失せたはずの痛みが、どこに潜んでいたのか、またしても私を苦しめる。
『君も、全部知ってる。俺のことも、彼のことも、3日前の出来事も全部』
もしも、本当に。
全てを知っているのなら。
教えてよ、私。
急に力が抜けて、かくん、と膝が折れた。
ベッドに置いた腕に、顔を埋める。
『この街には、天使と悪魔がいる』
滴り落ちないように堪えていた雫が、とうとう頬を伝って、こぼれた。
痛い。
頭も、心も。
鉄の塊で殴られたような激痛に、目を固く瞑る。
それでも、黒髪の男の子の手を握り続けた。